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川魚は貴重なタンパク源 昔の生活を考える

投稿日:2019年11月4日

皆さんは川魚を日常的に食べていますか?

鰻(ウナギ)や鮎(アユ)、鮭(サケ)を食べる人は少なくありませんが、川魚よりも海水魚や肉類を食べる人の方が多いのではないでしょうか?

食の種類が豊富になった現代の日本では、川魚を日常食として食べる人は昔に比べて減少しました。

昔の人々に想いを馳せると、山間部で暮らしていた昔人は、鰻や鮎はもちろん、鯉(コイ)や鮒(フナ)、岩魚(イワナ)など様々な川魚を食用として日常的に重宝していました。

今回は、昔の人々の食生活と川魚について、調理方法や漁法を紹介しながらお話しします。

川魚は貴重なタンパク源

食材の流通経路が確立されていなかった昔、海から遠い地域に住む庶民は海の魚を口にすることは滅多にありませんでした。そこで、タンパク源として重要な役割を果たしたのが川魚だったのです(※1)。

鮎や鯉、鰻に鰙(ワカサギ)、泥鰌(ドジョウ)、鮒、岩魚、虹鱒(ニジマス)・山女魚(ヤマメ)など、地域によって違いはありますが、様々な川魚がタンパク質を補給できる食材として重宝されていました。

参考

※1「和食を支える日本の食材 おいしさの秘密と多様性」『和食ガイドブック』平成23年、農林水産省http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-86.pdf

タンパク質の補給はなぜ大事なの?

川魚が“貴重なタンパク源”として重宝されてきたとお伝えしましたが、そもそもなぜ意識してタンパク質を摂取しなければならなかったのでしょうか。

それは、人間にとってタンパク質は“命の源”だから、なのです。

人間は、水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質で出来ています。骨や筋肉、皮膚、各種臓器もすべてタンパク質が主成分です。

またタンパク質には、体をつくる要素だけでなく、体の機能を調節する役割もあります。タンパク質が不足すると免疫機能が低下し抵抗力が弱くなることから病気にかかりやすくなることもあります(※2)。

つまりタンパク質を摂ることは、健康に生きるために必要不可欠なことだと言えるでしょう。そのため、海の魚が食べられない地域の人々にとって川魚は“貴重なタンパク源”とされていたのです。

参考

※2「免疫システムの主役はタンパク質?」公益財団法人日本食肉消費総合センター

http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui4/q_071.html

昔から行われている川魚のおいしい調理方法

川魚は特有の臭いがあると言われることがあります。弊社が行ったアンケートでも、「川魚の臭いが気になる」という回答が複数ありました。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)

また川魚には寄生虫がついていることがあるため、天然の川魚を生で食べることは以前からあまりなかったようです。じっくり火を通すことが昔からのスタンダードな調理方法で、工夫をしながら調理がされてきました

昔から行われている、川魚をおいしく食べる調理方法の一例をご紹介しましょう。

煮込む

食材を水や調味料の中で煮ることです。調味料を使って臭みを取り除きながら味付けを行う調理方法で、皆さんもご自宅で日頃からやっているものと思います。日本では、醤油や味噌など大豆由来の発酵調味料や、酒やみりんといった旨味も使用することが特徴です。

川魚の煮込み料理の一例として、濃い味噌で煮込む「鯉こく」があります。鯉こくは江戸時代に「鯉汁」とも呼ばれ、メジャーに作られていた料理だそうです。

焼く

「焼く」と一言でいってもその調理方法は様々あります。魚をそのまま串にさして焼く「姿焼き」や、塩をかけて直火でじっくり焼き上げる「塩焼き」なども有名です。

塩焼き料理の一例として、今でもよく食べられている「鮎の塩焼き」があります。

蒲焼き

醤油や砂糖などでタレをつくり、そのタレに魚をつけてから焼く調理方法です。

代表的なものに「鰻の蒲焼き」があります。江戸時代、鰻の蒲焼きは安価な軽食として庶民に親しまれていました。江戸の伝統的な郷土料理のひとつとして、今も多くの人に愛されています。

発酵

食材からうま味成分を引き出すと同時に保存性を高める効果がある調理方法です。

川魚料理の一例として、塩と米で乳酸発酵させる「鮒ずし」があります。日本古来の鮓(なれずし)の代表的なもので、滋賀県の郷土料理としても有名です。

 

今や観光資源としても活躍 昔ながらの川魚漁法

昔から川魚を捕獲するために様々な漁法がとられてきました。地域や川魚の種類によってその方法は多岐におよびます。

昔ながらの漁法の中には、今でも川魚を捕獲する手段として使われているものや観光客を集める観光資源になっているものも。昔ながらの漁法や釣り方をご紹介します。

梁(やな)漁

木や竹で作ったすのこ状の梁(やな)を、上流側に傾けて川の中に置き、上流から泳いできた川魚を捕獲する方法です。産卵期のなどは川を下る習性があるため、それを利用したものになります。一部の地域では一般の人も梁漁を体験できるようになり、観光客を集める資源として活用しているところもあります。

鵜飼(うかい)

鵜(ウ)という潜水して魚を捕らえる鳥を飼いならして行う漁法です。鵜のくちばしは大きく開くため、最大で35センチ位の川魚を捕らえることができます。魚を捕らえた際に鵜の胃の中に入らないよう、首に麻縄をつけ、吐き出させることで魚を確保します。漁業というよりも観光業として行われる場合が多く、岐阜県の長良川や京都府の宇治川など各地でたくさんの観光客を集めています。

投網(とあみ)漁

船や陸の上から袋状の網を川に投げ入れて魚を獲る漁法です。

投網漁は全国各地で幅広く行われていて、獲れる川魚は様々あります。ただ、投網で獲た魚の体は傷が付くことが多く、リリースしても生存率が下がると言われています。そのため、現代ではほとんどの河川で投網を使うことに対して規制があります。

友釣り

主に鮎を捕まえるための釣り方ですが、友釣りという方法もあります。鮎はなわばり意識が強い川魚で、自分のなわばりに他の鮎が侵入してくると体当たりのような行動をして攻撃します。その習性を利用して、エサではなく“おとり鮎”を針につけて、体当たりしてくる他の鮎を釣るという方法です。今でも行われており、「鮎の友釣り大会」が開催される地域もあります。

川魚をより身近に

このように貴重なタンパク源である川魚を確保するため、昔から色々な工夫がされてきました。

全国的にも今は養殖場が広がっておりますありますので、命の源であるタンパク質がギュッとつまった川魚を、ぜひ食べてみてください。